超高齢社会で、いつまでも健康で自立した豊かな生活を続けるためには、これまでの生活習慣に起因するメタボリックシンドロームや若年女性のやせの予防に加え、加齢に伴うフレイル(虚弱)を予防し、健康寿命を延伸させることが重要となってきます。そのためには、日常の運動、食事、睡眠等の生活習慣をより良いものとし、健康な状態を維持管理することが大切です。中でも、食事は、栄養バランスだけでなく、食品の機能を活用することで、健康の維持増進に貢献することが期待されます。
ところが、食の機能研究は、動物実験の削減、健常者による食の緩やかな機能を検証するために、試験の期間や試験に参加する人数、費用等の大きな負担、標準とされる無作為化対照試験(RCT)の限界など大きな課題を抱えております。一方、多成分からなる食品を摂取した際の現象をヒトの複雑な体内動態から総合的に解析できるアプローチ、すなわち複雑系間の相互作用を解明するための研究手法は未だ確立されておりません。
そこで、世界に先駆け超高齢社会を迎えた長寿国日本こそが、新たな研究基盤を創成し、我が国のみならず世界の人々の健康に貢献することを目指し、ILSI Japanは、当該分野で卓越したねらいと先行の強みを有する研究機関との共同研究講座を開設し、賛同する会員企業の出資と協働により、世界をリードできる食の次世代機能性研究基盤づくりの取り組みを始めました。
ひとつは、実生活から創出される莫大な量のリアルワールドデータを最新のデータサイエンスおよびAI技術を活用し、様々な生活習慣と健康との関係性を解明することで、一人ひとりに適した情報提供を可能とするAIシステムを構築する取り組みです。
もうひとつは、数千分子種よりなる食品摂取によるヒトの代謝状態を最新のコンピュータ技術と計算科学を活用し、高速で安価に食の機能性・安全性を予測するAIシステムを構築する取り組みです。
この研究基盤を創成し、食の本質的価値を理解し、多様化する実生活の変化を迅速に捉え、一人ひとりの健康の維持、増進に貢献するプレシジョン・ニュートリションの実現を目指します。
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